編集部より:
人間とレーシングカーのマラソンレース

ル ・マン 24 時間レースでの勝利は、モータースポーツに携わるティームにとってまさに究極の目標だと言うことができます。なぜなら、人間とレーシングカーだけでこの死闘に打ち勝つことは不十分であり、またレースには私たちの希望を無残にも打ち砕く “ディーヴァ” の存在が常にあるからです。だからこそ、総合優勝通算 19 回というポルシェの前人未到の記録はポルシェというブランドを際立たせているのです。

ゼバスティアン・ルドルフ

ゼバスティアン・ルドルフ

Editor

50 年前の 1970 年 6 月 14 日、ハンス・ヘルマンとリチャード・アトウッドは、そんなクラシックレースでブランド初となる総合優勝を果たしました。この時の勝利は、ツッフェンハウゼンのスポーツカーメーカーにとって世界的な躍進を意味していました。雨が降りしきる中、最高出力 580PS のポルシェ 917 ショートテールがコースアウトしないよう神経を尖らせていたパイロットたちが過酷なロングディスタンスレースを制した瞬間でした。

半世紀前の勝利は、ポルシェの歴史の礎であり、同時に現代史の一部でもあります。スティーブ・マックイーンが映画『栄光のル・マン』の舞台となったことがその理由です。そして彼は 917 を不朽の名作に織り込むことに成功したのです。

今号では、Dr. ヴォルフガング・ポルシェがル・マン 24 時間レースの思い出を振り返りながら、最後まで諦めないことの大切さを語っています。そしてエンジニアリングの集大成であるポルシェ 919 ハイブリッドが 2015 年から 2017 年の間に 3 連覇を果たした瞬間にもピットでその快挙に酔いしれていました。最後まで諦めないことへのこだわりは 2020 年においても変わりません。

現在、新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、その影響は長期化されることが予想されています。だからこそ、困難に立ち向かう姿勢や連帯感、そして人間性がこれまで以上に問われているのです。私たちはこうした困難な状況において、『クリストフォー ラス』第 395 号を読者の皆様にお届けできることを誇りに感じています。

今号ではそんな皆様を喧騒から離れたドイツの旅にお連れいたします。アウトバーンから遠く離れた文化的な景色を背景に、私たちをエスコートしてくれるのはポルシェの純電動スポーツ、タイカンです。ベー トーヴェンやフォンターニュ、そしてゲーテやシラーの足跡を一緒に辿ってみましょう。

今年 6 月に予定されていたル・マン 24 時間レースは開催が延期となりました。ファンにとっては悲しいお知らせですが、仮想現実(VR)の世界では 6 月中旬にポルシェ・タグ・ホイヤー E スポーツスーパーカッ プ第 4 戦が行われます。その舞台はもちろんル・マンサーキットです。

物語は永遠に続きます。『クリストフォーラス』を手に取って新たなストーリーを発見してみてください。それでは健康には十分お気を付けて、ポルシェコスモスのインスピレーションに満ちた感動の瞬間をお楽しみください。