軽やかに、ハードに

よりパワフルでよりスピーディー、そしてよりデジタル化された新型ポルシェ 911。先代モデルより大幅な軽量化を果たした新型は、最新技術の集大成だ。

  


数々の革新技術で革命を起こす新型 911 の進化が止まらない。新型 911 はミックスボディ構造を徹底して改良したことで、ボディでは剛性求められるフロント部とリア部を除き、先代モデルに比べて多くアルミ素材を使用。さらに従来、溶接していた箇所も “接合” したり、新たな接着技術で大幅な重量減に寄与している。とはいえ、どのようにしてスチールの使用割合を 30 パーセントまで抑えることが可能になったのか。

新型 911 カレラ S カブリオレとカレラ 4S カブリオレを例に挙げるとして、まずドアのヒンジに取り付けられ、フロントガラスの側面を囲む A ピラーに着目して頂きたい。これまで横転時の衝撃から乗員の安全を確保するためにフロントウィンドウの左右を支えるスチール製パイプを用いることが自動車業界での定説とされてきたのだが、スチールパイプでは隙間が生じるため点付けして溶接する必要があり、エンジニア陣はそこにまだ改善の余地があると考えていた。

その上、スポーツカーの車体上部に重量のあるスチールを用いるのは理想的な重量配分とは言えず、走行特性に影響を及ぼすであろう長年の懸念が解消されていなかったのだ。

そこでエンジニアたちが選んだのは、“有機シート” と呼ばれるガラス繊維強化熱可塑性プラスチック(GFRP)製のプレートだ。切断もしやすく、加熱してどんな形状にも成形することができるこの素材自体は以前から知られ、他社が市販モデルへの採用に積極的でははなかったものの、ポルシェでは市販モデルでもシャシーに必要な構成部品に採用したのだった。

しかしこの “有機シート” だけでは十分ではないのも事実だ。熱可塑性によって成形されたガラス繊維クロスプレートは、短繊維強化複合材料を用いることでハニカム構造が織り成されると、製造過程において “ハイブリッド射出” と称される技術で隙間に気泡状の素材を射出。そしてボディを組み立てる段階で、A ピラーの左右にはモジュールがはめ込まれ、接合箇所を高張力スチールシートで覆うように溶接したのだった。

さらに 911 のボディの塗装過程において乾燥段階で 160 度まで加熱することに目をつけたエンジニアたちは、隙間に充填されている気泡状の素材が熱に反応することを利用し、熱膨張によって A ピラーを取り囲むその他のコンポーネントをプレス接合。その結果、問題の “遊び” も見受けられず、しっかりと接合されていたことが自社開発のテストによって立証されたのだった。各 A ピラーにつき 2.7 キロも減量したとは思えないほどの安定性。今後もイノベーションがさらなるポルシェの進化を牽引するのは間違いないだろう。

スチールシート

クラシックな深絞り用スチールと熱可塑性のある高張力の溶接シートが新たな A ピラー構造のベースとなる

ハニカム構造

ガラス繊維強化プラスティック(GFRP)から構成され、圧と熱をかけた状態で予め成形されている有機シートに射出する

有機シート

加熱することで精確に成形されたガラス繊維強化プラスティックシートはスチールにも似て、強度・剛性ともに優れている

発泡成形

約 160 度で膨張することで、全てのパーツが永続的かつ相互的に圧し合う仕組みだ

ポルシェ 911 カレラ S カブリオレ
ポルシェ 911 カレラ 4S カブリオレ

燃料消費量 市街地:11.6 〜 11.1リッター/100km
高速道路:7.8 〜 7.6リッター/100km
総合:9.1 〜 9.0リッター/100km
CO2 排出量(総合):208 〜 207g/km
効率クラス:F

Thorsten Elbrigmann
Thorsten Elbrigmann